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編集後記のようなライター(音楽)のブログ

「世界睡眠デー」に解禁。8時間に及ぶ、眠れる音楽をストリーミング配信。

今日は春分の日だが、例年その一つ前の金曜日は「世界睡眠デー」に定められている。この日を記念し、ポストクラシックの旗手マックス・リヒターによる眠るための音楽『Sleep』が、ストリーミング配信サービス『Apple Music』や『Spotify=スポティファイ』で配信されている。驚くべきことに、同曲は8時間にも及ぶ。 

3月16日“世界睡眠デー”にあわせてストリーミング解禁

Spotify(一部無料)

Max Richter – Sleep

Apple Music(有料/初回登録から3カ月間の無料トライアル期間あり)

マックス・リヒター「Sleep」をApple Musicで 

 

マックス・リヒター(MAX RICHTER)は1966年1月21日ドイツ・ハーメルン生まれの音楽家。アカデミックな音楽教育を受け、学生時代にミニマルミュージックと出会い、ドイツ・グラモフォンというクラシック音楽のレーベルに所属。アンビエントエレクトロニカ的などジャンルを超えたアプローチで、幅広いファン層から人気をあつめている。

Richter

昨今の活躍のなかで、注目すべきは映画『メッセージ(原題 Arrival)』にマックス・リヒターの静謐なミニマルミュージック『On the Nature of Daylight』がテーマ曲として採用されたこと。

同映画のサウンドトラックはヨハン・ヨハンソンが担当したが、ドゥニ・ヴィルヌーヴが編集時に仮入れした『On the Nature of Daylight』を越える作品が出来なかったことから、本編でも同曲が使われたという。曰く付きのテーマ曲だ。

 

 公式のトレーラーではありませんが『On the Nature of Daylight』を聞くことができます

 

『Sleep』も『On the Nature of Daylight』と同様、シンプルな音数による美しいメロディとミニマルな展開が特長的な楽曲だが驚くべきは8時間という楽曲の長さ。眠るための音楽ゆえ、睡眠時間をカバーする曲長となっている。リヒターは神経科学者デイヴィッド・イーグルマンの指導のもと「聴く人を眠りに誘い、実際に眠っている間も聴き続けられる」音楽として作曲。CD作品としては1時間バージョンの『From Sleep』が発売されていたが、今回のストリーミング配信サービスでは31のトラック、8時間で構成。単一の楽曲としてはレコーディング史上最長となる。

神経科学者デイヴィッド・イーグルマンとの対話について>

M.リヒター 今回の作曲についてもざっくばらんに話し合い、睡眠とは何か、その機能とは何か、睡眠中に心の中で何が起きているのか、といった点を訊ねました。彼は非常に興味深い話をしてくれました。まず、我々は睡眠中に意識のスイッチを切っているわけではなく。実際には睡眠中も意識が忙しく働いているということ。もうひとつは、睡眠がいくつもの“パーツ”から成り立っているということ。例えば徐波睡眠(slow-wave sleep)と呼ばれるノンレム睡眠の時、脳はさまざまな情報を処理し、短いスパンの記憶や長いスパンの記憶を整理して、情報に意味付けを与えるんです。朝、目が覚めると、頭がすっきりし、それまで抱えていた悩み事の解決の糸口が見えたりするのが、それですね。さらに面白いのは、音楽が睡眠を促す効果をもたらす、という研究が存在すること。例えば、ミニマル・ミュージックの反復語法のような構造は、明らかに眠気を催させるのです。

マックス・リヒター 「 Sleep 」 インタビュー

「世界睡眠デー(3.16)」の3日前、3月13日にアメリカの音楽フェスSXSWでマックス・リヒターの『Sleep』コンサートが開かれた。これは深夜24時に開演、『Sleep』 をノンストップで完奏する8時間のコンサートだ。客席はなくベッドが搬入され、マックス・リヒターは休むことなく一晩中演奏し、観客は翌朝までぐっすり眠ったという。

www.youtube.com

 

なお『Sleep』の9枚組アルバムは下記のとおりリリースされている。ただ、CDを差し替えることを考えると睡眠中には先のストリーミング配信を利用するのが便利だ。

SLEEP